学び方を身につけよう!

Learn how to learn!

 わたしは、「だれでもできるようになる」という確信を持っている。数多くの生徒たちが証明してくれているおかげでもある。もし君ができないのだとしたら、それは学び方をまちがえているのだ。
 学校の学習にかぎらず、習い事でも、スポーツでも、芸術でも、すべての学習に共通した学び方がある。かんたんなことなのだけれど、なぜか、ひとは学び方をまちがえてしまう。
 たとえば、将棋の藤井聡太棋士は、「やりたい」と思ったときに自発的に将棋に取り組んでいるだろうし、MLBの大谷翔平選手は、就寝前に自分を見つめて「自分はできる」と念じて眠りについているだろう。どちらも自分を高める方法で、ずいぶん以前から実践されていることだ。
 ところが、多くのひとが、だれかに命じられて、いやいやなにかに取り組んだり、学習後にテレビを見て、サスペンスにどきどきしながら眠ったりしてしまう。どちらも非効率で、学習を無効化してしまう。
 アルプスの少女ハイジは、文字が読めなかった。羊飼いのペーターに「本なんて、むずかしくて、ぜったいに読めないよ」といわれ続け、「わたしは読めない」と思い込んでしまったからで、「できない」というネガティブな思い込みが学習の最大の敵である。「できない」と思っているかぎり、ひとはなかなかできるようにならない。「できる」と思うから、ひとはできるようになる。
 教師も、教え方をまちがえる。こわい顔をして、厳しく指導するだけでは、生徒は学習を吸収できない。クララの家庭教師は、ハイジに対して、ひたすら厳しかった。緊張したハイジは、感情が混乱するだけでなにも学べなかった。家庭教師は、ハイジを学習障害だと決めつけた。
 ハイジを救ったのは、クララのおばあさんだ。クララのおばあさんは、ハイジをじゅうぶんにリラックスさせてから、「だれでも読めるようになるわ」と励ました。ハイジを「読みたい」という気持ちにさせてから、読むことを学ばせた。これはモンテッソーリ教育の手法で、藤井聡太棋士の学習法でもある。
 さて、眠る前の状態に重点を置いたのは、十九世紀のフランスの療法家たちだ。現在では、神経科学の発展でずいぶん説明しやすくなっているけれど、かれらは眠る前の状態が、睡眠中、脳に書き込まれることに気がついた。明るい気持ちで眠ると、明るい気持ちの状態で目覚め、暗い気持ちで眠ると、暗い気持ちの状態で目覚める。おなじパターンでいえば、もし小さな子どもなら、「いい子ね」といわれて眠ると、いい子の状態で目覚め、「ダメな子ね」と叱られて眠ると、ダメな子の状態で目覚める。調子がわるい人が、「だいじょうぶ」と信じて眠ると、よくなった状態で目覚め、「だめだあ」と絶望して眠ると、もっと悪くなって目覚める。「できる」と信じて眠ると、できるようになって目覚め、「できない」とあきらめて眠ると、できないまま目覚める。ともかく、眠る前の状態が睡眠中に強化されて定着するわけだ。
 睡眠は、毎日のことであり、人の記憶は睡眠中に定着するので、眠る前の状態がものすごく重要であることはまちがいない。学習に関していえば、「できる自分」の状態で眠れば、「できる自分」で目覚め、それを毎日積み重ねていけば、じっさいに「できる自分」になる。
 そういっても、学習や練習をさぼっていて、眠るときだけ「できる」と念じても、効果はまったくない。まずしっかり学習や練習に取り組んだうえで、眠る前に「できる」と確信して、やすらかに睡眠をとろう。
 若くして活躍している人たちは、学び方がとても上手なのだ。しかも、それはずいぶん以前から実践されている方法で、秘密でもなんでもない。
 学び方の基本を身につけて、積極的に学習しよう!

山手学院 学院長 筒井 保明